平成29年10月31日号

商標ニュース

特許庁、音楽的要素のみからなる音商標について初の登録査定をしたと発表

特許庁は、平成29年9月26日、音楽的要素のみからなる音商標について初の登録査定をしたとのプレスリリースを行った。今回、登録査定がなされたのは、大幸薬品株式会社の「ラッパのメロディ」、インテル・コーポレーションのサウンドロゴ、およびBMWのサウンドロゴの3件である。特許庁が平成27年4月に新しいタイプの商標の商標の出願の受付を開始して以降、音楽的要素のみからなる商標について登録査定がなされるのは、今回が最初となる。

平成26年の商標法改正により、新しいタイプの商標の登録が認められるようになり、改正法が施行された平成27年4月1日より、特許庁は新しいタイプの商標の出願の受付を開始した。

新しいタイプの商標のうち、音商標については、これまでに既に商標登録されたものも多数存在したが、それらはいずれも、言語的要素(会社名やブランド名の発音など)を含む音商標であった。言語的要素を含まない、音楽的要素のみからなる商標については、商標出願は存在したものの、実際に登録が認められたものはこれまで、まだ存在しなかった。

今回、特許庁が発表した、登録査定がなされた音楽的要素のみからなる商標は、大幸薬品株式会社の「ラッパのメロディ」、インテル・コーポレーションのサウンドロゴ、およびBMWのサウンドロゴの3件である(各商標の音については、特許庁のプレスリリースからリンクがあるMP3ファイルを参照されたい。)。

なお、これら3件の商標出願に対しては、いずれも、特許庁の審査官より、商標法第3条1項6号(識別力の欠如)を理由とする拒絶理由通知がなされている。これに対し、各商標出願の出願人は、現実の市場において音商標が出所識別標識として機能していることを立証することで、登録査定を得たものである。従って、今後の、音楽的要素のみからなる音商標の出願の審査においては、出願人は、現実の市場において音商標が出所識別標識として機能していることの立証を求められることになると予想される。

音楽的要素のみからなる商標の登録可能性それ自体は、改正法の立法時から既に認識されていたが、今回、音楽的要素のみからなる商標について初めて登録査定がなされたことの意義は大きい。今後、音楽的要素のみからなる商標の登録例は増加するものと予想される。

特許庁のプレスリリースはこちら(外部ウェブサイト)

文責: 乾 裕介 (弁護士・弁理士・ニューヨーク弁護士)