平成28年3月4日号(臨時号)

海外商標ニュース

改正CTM規則のポイント(3): その他の運用面の変更 - 国際登録出願経由の出願に関する異議申立期間の短縮、サーチレポートの廃止、各国商標庁における取消審判・無効審判制度の創設

現行制度の下では、CTMの異議申立期間は、国際登録出願を経由した場合には出願公告の日より6ヶ月後からの3ヶ月間で、公告日から数えると9ヶ月となっている。改正規則の施行後は、WIPO経由の出願の場合には公告日より1ヶ月後からの3ヶ月間で、4ヶ月となる(異議申立期間の短縮)。
現行制度の下では、全てのCTM出願に対して自動的にOHIMからのサーチレポートが出願人に送付されるが、改正規則の施行後は自動的には送付されなくなり、出願時に指定する必要がある(サーチレポートの廃止)。
従来、欧州の一部の国においては、登録商標の取消や無効に関しては裁判所に申し立てなければならなかったが、今後は全ての国において、商標庁における取消審判や無効審判制度を設ける必要が生じる(各国商標庁における取消審判・無効審判制度の創設)。

1. 国際登録出願経由の出願に関する異議申立期間の短縮

現行制度の下では、直接CTMを出願した場合と、WIPOの国際登録出願を経由した場合とで、CTMに対する異議申立て期間に差があった。直接出願の場合には、出願公告の日から3ヶ月が異議申立て期間であるが、国際登録出願の場合には、公告の日から9ヶ月となっている。これは、3ヶ月間の異議申立期間が、出願公告の日から数えて6ヶ月後から計算されるからである。
しかしながら、これに対しては、たとえ海外からの出願であることを考慮したとしても、これだけ異議申立期間に差があるのは妥当ではない、との指摘がなされていた。
これを受けて、改正規則が施行される2016年3月23日以降は、WIPOの国際登録出願を経由した場合には、公告日から1ヶ月後の日から数えて3ヶ月以内が異議申立期間とされる。すなわち、実質的には、出願公告がなされた日から数えて4ヶ月後までが異議申立ての期間となる。
直接出願の場合の異議申立期間に変更はないが、国際登録出願で欧州を指定した出願に関しては、異議申立期間の実質的短縮となるので、ぜひ注意されたい。

2. サーチレポートの廃止

CTMといえば、OHIMは絶対的拒絶理由に関する審査のみを行い、相対的拒絶理由に関する審査は行わない代わりに、後者に関しては異議申立手続きなどに委ねるという運用がなされている点が、特徴として挙げられる。

従来は、CTM出願をした場合、自動的にOHIMから先行商標と思われる商標が機械的に抽出されたサーチレポートが出願人に送付される運用となっていた。しかしながら、改正規則の施行後、サーチレポートが自動的に提供されることはなくなり、出願時に、サーチレポートの提供を要求する旨所定の欄に選択を入れていた場合にのみ、サーチレポートが送られることになる。

ただし、OHIM自体は、出願人からの要求の有無にかかわらず、各出願がされるごとに、サーチレポートを自動的に作成するという運用はこれまでと変わらず行う。作成されたレポートを元に、先行商標として抽出された商標の権利者に対しては、従来通り、ウォッチングレポートが送付されるからである。

3. 各国商標庁における取消審判・無効審判制度の創設

さらに、今後は欧州の国々全ての商標庁において、異議申立制度を設けなければならず、また、全ての国が、取消審判および無効審判制度を設けなくてはならなくなる。

従来、ベネルクス、フランス、イタリアおよびスペインにおいては、登録商標の取消および無効に関しては裁判所で争う必要があったが、今後は各国における商標庁にて請求することができるようになる。ただし、各国商標庁において取消審判および無効審判制度を設けるという点に関しては、各国商標庁における組織やシステムの大きな修正が求められるということで、7年間の猶予期間が設けられ、改正規則の施行日より7年以内に新しい制度での運用が完成していればよいとされている。

(文責: 山崎理佳(カリフォルニア州弁護士))