令和元年12月5日号

海外商標ニュース

ミャンマー:新商標法の施行に伴うソフト・オープニングに向けた準備を進めておくことが望ましい

ミャンマーにおいて、新たな商標法が近日中に施行される予定である。新商標法の施行は2段階に分けて行われることとなっており、1段階目のソフト・オープニングの6ヶ月の期間中は、その期間の開始前に所有権宣言手続を完了した商標の再出願のみ受理される。ソフト・オープニング期間がいつ開始するかは現時点では未定であるが、ソフト・オープニング期間の開始後、なるべく早期に再出願を行うことができるよう、あらかじめ進めておくことが望ましい。また、ソフト・オープニング期間中の再出願を行う予定の商標について所有権宣言手続を完了していない場合には、ソフト・オープニング期間の開始前に、至急、所有権宣言手続を完了しておく必要がある。

ミャンマーでは2019年1月に新たな商標法が成立し、今後、2019年12月~2020年1月頃のいずれかの日に施行される予定となっている(2019年12月5日現在、正確な施行日は未定)。
これまで、ミャンマーには近代的な商標登録制度が存在せず、代わりに、所有権宣言(Declaration of Trademark Ownership)という手続によって商標の保護が図られてきた。今回、新商標法が施行されることにより、ミャンマーにも近代的な商標登録制度が導入されることになる。

他方で、従前の所有権宣言手続によって保護されてきた商標について、新商標法の下で優先的な保護を受けられるよう、新商標法の施行は、「ソフト・オープニング」と「グランド・オープニング」の2段階に分けて行われる。
最初の6ヶ月間はソフト・オープニングの期間であり、この期間中は、この期間の開始前に所有権宣言手続を完了した商標(同一の出願人による、同一の指定商品・役務についての同一の商標)の再出願のみ受理される。ソフト・オープニング期間がいつ開始するは、現時点では未定であるが、最早では、2019年12月20日に開始するのではないかという未確認情報もある。
ソフト・オープンニング期間が終了すると、グランド・オープニングが開始し、何人も、新規の商標について出願することが可能となる。

ミャンマーの新商標法は先願主義を採用しており、抵触する商標出願の優劣は出願日を基準として判断されることになるが、グランド・オープニングの開始後に行われた商標出願の出願日は、実際に出願が行われた日となる。
他方、ソフト・オープニング期間中に行われた再出願の出願日については、(1)実際に出願が行われた日が出願日となるのか、それとも、(2)実際に出願が行われた日に関わらず、ある特定の日(例えば、新商標法の施行日)に出願されたものとして扱われるのか、現時点では不明である。
上記(1)の可能性もあることを考慮すると、ソフト・オープニング期間中に商標の再出願を予定している場合には、ソフト・オープニング期間の開始後、なるべく早期に再出願を行うことができるよう、あらかじめ準備を進めておくことが望ましい。
なお、ソフト・オープニング期間中に商標の再出願を行う場合には、現地代理人に対する委任状が出願時に必要となるが、この委任状は、公証が必要であるものの、領事認証までは必要とはされない見込みである。(委任状の書式等については、現時点では公表されていない。)
また、商標の再出願に際しては、裏書済の所有権宣言書の原本が出願時に必要とされる可能性があるので、これもあらかじめ用意しておくことが望ましい。

さらに、ソフト・オープニング期間中の再出願を行う予定の商標について所有権宣言手続を完了していない場合には、ソフト・オープニング期間の開始前に、至急、所有権宣言手続を完了しておく必要がある。
なお、所有権宣言手続に際しては、現地代理人に対する委任状が手続時に必要となり、この委任状は公証および領事認証が必要である(この手続きには通常、1週間程度はかかる)ことから、今から所有権宣言手続を行うのであれば、直ちに準備を開始する必要がある。

ソフト・オープニングについては、現時点でもまだ不明な点が多く、現地からの情報にも未確定なものが多い。今後、現地からの新情報に注意しつつ、緊急の対応が必要になった場合に備えて、あらかじめ準備を進めておくことが重要である。

文責: 乾 裕介 (弁護士、弁理士、ニューヨーク州弁護士)