平成29年3月6日号

商標ニュース

特許庁、色彩のみからなる商標について初の登録査定をしたと発表

特許庁は、平成29年3月1日、色彩のみからなる商標について初の登録査定をしたとのプレスリリースを行った。今回、登録査定がなされたのは、株式会社トンボ鉛筆の青・白・黒の3色からなる商標、および、株式会社セブン-イレブン・ジャパンの、白・橙・緑・赤の4色からなる商標の2件である。特許庁が平成27年4月に新しいタイプの商標の商標の出願の受付を開始して以降、色彩のみからなる商標について登録査定がなされるのは、今回が最初となる。

平成26年の商標法改正により、新しいタイプの商標の登録が認められるようになり、改正法が施行された平成27年4月1日より、特許庁は新しいタイプの商標の出願の受付を開始した。

新しいタイプの商標のうち、音商標、動き商標、ホログラム商標および位置商標については、既に商標登録されたものが存在したが、色彩のみからなる商標については、多数の出願が存在する(平成29年3月1日に「J-PlatPat」で検索したところでは、係属中の出願が437件)ものの、登録が認められたものはまだ存在しなかった。そのため、実務者の間では、色彩のみからなる商標の最初の登録例が何になるのか(そもそも、色彩のみからなる商標について現実に登録が認められることがあるのか)が注目されていた。

今回、特許庁が発表した、登録査定がなされた色彩のみからなる商標は、以下の2件である。

色彩のみからなる商標

なお、いずれの出願も、拒絶査定不服審判に至っておらず、審査段階で登録が認められている。

色彩のみからなる商標について初めて登録査定がなされたことの意義は大きい。他方で、今回、登録査定がなされたのは、いずれも複数の色の組合せからなる商標であり、単色からなる商標ではない。単色からなる商標については、そもそも単色が識別力を獲得することがあり得るのかについて疑問視する見方もあり、制度上は登録が認められるとしても、実際に認められるためのハードルは相当に高いことが予想される。

これに対し、今回のような、複数の色の組合せからなる商標については、複数の色の組合せは単色と比較して識別力を獲得し易く、従って、識別力が認められるためのハードルは相対的に低いと考えられる。今回、色彩のみからなる商標について登録査定がなされたことで、今後、他の出願についても登録に向けた動きが出てくると予想されるが、その場合であっても、登録が認められるのは主として、今回のように複数の色の縞からなる商標であると予想される。今後、色彩のみからなる商標について出願を検討する場合にも、複数の色の組合せについて出願することを、第一の選択肢として検討するケースが多くなるのではないかと思われる。

特許庁のプレスリリースはこちら(外部ウェブサイト)

文責: 乾 裕介 (弁護士・弁理士・ニューヨーク弁護士)