インド商標庁が2016年3月に極めて多数の商標出願を放棄扱いとしていたことが、4月になり判明した。その中には、インド商標庁が誤って放棄扱いとした商標出願も存在するのではないかと指摘されており、インド商標庁が意見陳述の機会を設けている他、デリー高等裁判所が商標出願を放棄扱いとすることを停止する命令を出している。事態は現在も流動的であるが、インドにおいて商標出願をしている出願人は、現地代理人に連絡して、自己の商標出願が適切に扱われているか否かを確認することが推奨される。
インド商標庁(正式名称は「インド特許意匠商標総局 (the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM)」)が2016年3月に放棄扱いとした商標出願の件数が、166,767件に達していたことが、2016年4月になって判明した。2016年2月以前に放棄扱いとなった商標出願の件数は、1ヶ月当たり約1,500~5,000件程度で推移していた。
2016年3月に放棄扱いとなった商標出願の件数が飛躍的に増加した理由としては、拒絶理由通知に対する出願人からの応答が適切に行われなかった件について、一斉に放棄扱いとなったためであるとの説明が、一応はなされている。しかしながら、今回、放棄扱いとなった商標出願の中には、出願人がインド商標庁から拒絶理由通知を受領しておらず、あるいは出願人が拒絶理由通知に対して適切に応答したにも関わらず、誤って放棄扱いとされてしまった商標出願が含まれているのではないか、との指摘がなされている。
インド商標庁は2016年4月4日、通知を出し、自己の出願が誤って放棄扱いとされてしまったと考える出願人は、2016年4月30日までに陳述を行うことができる旨を公に告知した。
他方、デリー高等裁判所は、インドの商標弁護士からの申立てを受け、2016年4月5日、インド商標庁に対し、2016年3月20日以前にインド商標庁が行った商標出願を放棄扱いとする取扱いを停止するとともに、その他の商標出願に関しても、法律に規定された通知を行わずに商標出願を放棄扱いとしてはならないことを命じた。
今回の問題については、事態は現在もなお流動的であり、今後、どのように事態が推移するのか予測は困難である。
しかしながら、少なくとも、現在、インドにおいて商標出願を行っている出願人は、インドの現地代理人に連絡し、自らの商標出願、とりわけ長期間に渡ってインド商標庁から何ら通知を受けていない商標出願(異議にかかっているものも含む。)が、現在でも適切に取り扱われているか否かを確認することが、強く推奨されるところである。
(文責: 乾 裕介(弁護士・弁理士・ニューヨーク州弁護士))